ウイルス感染と種イモ

自然薯のウイルス感染

自然薯栽培では、年数を経るにしたがいイモの肥大が悪くなることがあります。これは種イモに収穫したイモを繰り返し利用しているうちに、ウイルス病が蔓延したためと考えられています。ウイルス病に罹ったイモは肥大しにくくなり、一年かけて育てても種イモほどの大きさにしかなりません。このウイルス感染を回避するためにはウイルスに感染していない種イモを手に入れるしかありません。

自然薯のウイルス病はヤマノイモモザイクウイルスの感染によって引き起こされます。ウイルスはウイルス病に罹った自然薯の樹液を吸ったアブラムシが他の健康な自然薯の葉や茎の汁を吸うときに感染していきます。感染すると葉にモザイク模様が現れ、葉や茎の勢いがなくなります。そのため、秋に枯れるはずの葉や茎が早く枯れ上がり、イモの肥大も悪くなるわけです。

もし、このモザイクウイルスに感染してしまった場合、今のところ抜き取る以外に方法は無いようです。梅雨時の最も生長する時期に葉の表面にモザイク模様が現れ、ツルの伸び具合の悪い株があったら、その種イモはウイルス病に感染している可能性が非常に高くなります。そのままにしておくとイモが肥大しないどころか、他の株にも感染させてしまうことが考えられるので、一刻も早く抜き取るべきです。

また、アブラムシの定期的な駆除は、自然薯のウイルス感染予防に繋がります。アブラムシは薬剤散布で防ぐことができるので、葉が展開し始める6月頃から茎や葉が黄色くなり始める10月頃まで、月2回程度の薬剤散布をお勧めします。



ウイルスフリーの種イモ

ウイルス病に対する根本的な解決策は、ウイルスフリーの種イモを手に入れるしかありません。自然薯のウイルスフリー株は、愛知県や静岡県の試験研究機関で育成され利用されているようですが、ベランダ菜園で楽しんでいる私のような個人には、とても手に入るような気がしません。そのため、ウイルス感染していないイモから地道に種イモを確保していくしかありません。

種イモの繁殖方法は二通りあります。一つは収穫したイモを翌春まで貯蔵し、これを切って種イモ(切りイモ種)とする方法です。しかし、この切りイモ種の問題点は、種イモを通してウイルス病を持ち込みやすく、繰り返し利用しているうちにウイルスが蔓延し、収穫量が減少してしまうことです。(1本の重さが400〜800gのイモを種イモとし、1個の重さが60gくらいとする)

もう一つはムカゴを一年間ほ場で栽培し、得られたイモを種イモ(一年イモ種)とする方法です。この方法では、ウイルスフリー株から採取したムカゴを用いることが前提となりますが、狭い面積で多くの種イモが確保できることと、土壌病害に汚染されないことが利点になります。(春にムカゴを蒔き、秋に茎葉が枯れ上がる頃にはイモが出来ているが、そのまま掘らずに越冬させ、翌年3月に掘り出す。1個40g以上のものを種イモとする。)

他に種子から種イモを得ることもできますが、あまり現実的ではありません。(ウイルス病は種子伝染しないが、親株と違う品種となる。)