ムカゴから種イモ

ムカゴの採取と保管

自然薯栽培にはいくつかのポイントがあります。その一つに「種イモの良し悪しが自然薯の出来を左右する」という格言があります。優れた特性を持つウイルスフリー株を種イモに用いることが賢明とされており、これを栽培していく方が切りイモを育てるよりもイモの肥大が良くなるわけです。ムカゴを採取する際、葉などのウイルス症状(モザイク模様)の有無をよく観察し、健康な株から葉腋に着生したものを確保しましょう。

ムカゴは8月下旬に着生し始め、9月中旬に強い風が吹くと落下します。ここ埼玉県南東部のベランダでは、6月下旬に着生し、8月中旬には収穫できそうな感じになります。収穫したムカゴは乾燥しないように新聞紙でくるんでタッパーなど気密性の高い容器に入れ、冷蔵庫内で乾燥と発芽を抑えるように保管します。ちなみに植え付けるときは、そのままの状態で2週間ほど室温に放っておきます。



種イモ(一年イモ)の養成

ムカゴからは2、3本の不定芽が形成されツルになります。それぞれの芽からイモはできますが、発育に差が出ることがあるので、強い不定芽を残し他の芽はかき取ってしまいます。ムカゴから発生した根は、種イモの吸収根に比べて細く切れやすくなっており、あまり根を張っていないので土壌の乾燥に影響を受けることがあります。

ムカゴを蒔いて一年イモを養成する場合、0.5g以上のムカゴであれば一年イモの養成に十分なんだそうです。植え付けは平均地温が10℃以上となる4月中旬に行い、芽が5cm程度伸びたものを定植します。植え付け後、高さ1.5m程の柵を越えていくようなツルがある場合は切り取ってしまって構いません。ツルを誘引する理由は、茎葉への日当たりと風通しを良くすることであり、高くしていくことではありません。支柱を長くしてもイモの肥大には関係なく、ムカゴの着生量が増えるだけです。

葉が数枚開いたら、よく観察し、モザイク模様がある株はムカゴごと抜き取り処分します。ツルだけ切り取ると残っていたムカゴから再びツルが出てきて被害が拡大してしまうため、必ずムカゴごと抜き取ります。暖かくなってくるとモザイク模様が薄れていってしまうので、早い時期に思い切って処分してしまう方がよいでしょう。

7月下旬から9月中旬頃までの夏場は、イモの伸長と肥大が顕著なため、こまめにかん水し適度に土壌の水分を保つようにします。まとめてかん水してしまうと横すじ状に亀裂が入ってしまうことがあるので、こまめに行うか自動水撒き機などを使うと良いでしょう。また、イモの肥大は9月以降急速に進むので、この時期に追肥を行います。自然薯は根が浅いので、肥料は一度に溶け出さないタイプのものを選び、窒素、リン酸、カリ成分が同量程度のものを使います。

一年イモの収穫は茎葉が枯れ上がった以降であれば基本的にいつでも問題ありませんが、翌年の3月に収穫した方が貯蔵の手間も省け腐敗の心配もいりません。